診療内容
乳がんとは
about
乳がんは、乳房の中にある「乳腺」に発生する悪性腫瘍です。乳腺の中でも多くは乳管(母乳の通り道)にできる「乳管がん」で、ほかに「小葉がん」などの種類があります。
女性に最も多いがんのひとつで、日本では9人に1人が一生のうちに乳がんを経験するといわれています。
近年は食生活の変化や出産年齢の上昇などの影響もあり、40代〜50代を中心に発症が増えていますが、30代などの若い世代にもみられます。そして、早期発見・早期治療により、治癒する方が非常に多い病気でもあります。
乳がんの原因・乳がんになりやすい人
risk & causes
乳がんの明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、発症には女性ホルモン(エストロゲン)の影響が大きく関わっていると考えられています。このホルモンは乳腺を刺激する作用があり、長期間にわたって分泌されるほど乳がんのリスクが高まるとされています。
そのため、以下のような要因がある方は、比較的乳がんになりやすい傾向があります。
- 初潮が早く、閉経が遅い
- 出産経験がない、または初産年齢が高い
- 授乳経験がない
- 家族や親族に乳がん・卵巣がんの既往がある
- 閉経後の肥満(脂肪組織からエストロゲンが作られるため)
- 過度な飲酒・喫煙・ストレス・運動不足などの生活習慣
とはいえ、これらの要因があるからといって必ず乳がんになるわけではありません。定期的な検診を受け、早期に変化を見つけることが最も重要です。
主な症状
symptoms
乳がんの代表的な症状は、乳房の「しこり」です。そのほかにも、乳頭からの分泌物(特に血の混じった分泌物)、乳頭や皮膚のひきつれ、へこみ、ただれなどが見られる場合があります。
しかし、初期の乳がんは自覚症状がないことも多く、しこりが触れないケースもあります。
そのため、症状がなくても定期的な乳がん検診を受けることがとても大切です。異常を早期に見つけることで、治療の選択肢が大きく広がります。
| 症状 | 乳がん | 良性乳腺疾患(乳腺症・乳腺炎など) |
|---|---|---|
乳房のしこり |
〇:動くことが多い | 〇:柔らかく動くことが多い(乳腺症・線維腺腫など) |
乳房の持続的な痛み |
△:まれにあり | 〇:よくある(特に乳腺症) |
乳頭からの分泌物 |
〇:血性・片側などは要注意 | 〇:両側・透明や白色なら良性のことが多い |
乳房の大きさや形の左右差 |
△:急激な変化は要注意 | △:生理的な差も多い |
乳頭の陥没や形の変化 |
〇:要注意サイン | △:先天的・加齢によることも |
皮膚の赤み・熱感・腫れ |
〇:炎症性乳がんで見られる | 〇:特に乳腺炎でよく見られる |
皮膚のくぼみ・ひきつれ |
〇:乳がんの典型的サイン | ×:通常は見られない |
皮膚がオレンジの皮のようになる |
〇:炎症性乳がんの特徴 | ×:ほぼ見られない |
検査と診断
tests & diagnosis
乳がんの検査には、主に「マンモグラフィ検査」と「超音波(エコー)検査」があります。マンモグラフィは乳房をX線で撮影し、微細な石灰化や早期のがんを発見するのに適しています。
一方、エコー検査は乳腺の中のしこりや構造を詳しく観察でき、被ばくがないため若い方や妊娠中の方にも安全です。
当院では、「Fuji Film AMULET ELITE(マンモグラフィ)」や「TOSHIBA Aplio300(超音波診断装置)」など、最新の高精細機器を導入しています。細胞診・生検やMRI検査(MRIは紹介になります)などの精密検査を行い、より確実な診断を行っています。
検査後はその場で医師が結果をわかりやすく説明し、不安や疑問を残さないよう丁寧にご案内します。
ステージと治療
stages & treatment
乳がんは、がんの広がり方によって0期(非浸潤性がん)からⅣ期(遠隔転移を伴うがん)までに分類されます。
特に0期〜Ⅰ期の早期乳がんであれば、治療によってほぼ全例の方が治癒したと同じ状態になるといわれています。
乳がんのステージは、主に以下のように分類されます。
- 0期(Tis期)
- がん細胞が乳管や小葉の中にとどまり、周囲の組織に広がっていない状態。
- Ⅰ期
- がんの大きさが2cm以下で、リンパ節転移がない、またはごくわずかな状態。
- Ⅱ期
- がんが2cmを超える、またはリンパ節に転移がみられるが、遠隔転移はない。
- Ⅲ期
- がんが胸壁や皮膚に広がる、またはリンパ節転移が複数みられる進行期。
- Ⅳ期
- がんが肺・骨・肝臓などの他臓器に転移している状態。
乳がんは、早期に見つければ治る可能性の高い病気です。そのためには、定期的な検診を受けること、そして気になる症状があるときにすぐに相談することが何より大切です。
当院では、日本乳癌学会認定 乳腺専門医が診察・検査を担当し、専門的な知識と豊富な経験をもとに、ひとりひとりに寄り添った診療を行っています。「なんとなく不安」「検診で再検査になった」「しこりがある気がする」など、小さな変化からでも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。